独りっ子で、私をお姉ちゃんと慕ってくれたからこその可愛さでやったのに、二度とこいつを弟として扱わないと心に誓った。

しかし、結局は斗真と何ら変わりない接し方しか出来なかったけど、10年ぶり位だろうか。

“お姉ちゃん”扱いには鳥肌が立った。




「ところでいつ行きましょうか。課長と決めても良いですか?」



「どうぞ」



仕事モードとなった七星を、課長室へと見送る。

--プルルル…ッ



「木ノ島刑事課」



あまり取りたくなって来た電話を取りながら、癖でボールペンを手にパソコンへと手を伸ばす。



『あの……』



「はい?」



『難波愛依さんは……』



「私ですが?」



しかし、名前もわからない電話の主だが、聞き覚えのある声に手が止まった。

弱々しい、控え目な男の人の声。



『今日、ネットカフェで入店を断られて……。その……僕の事、バレちゃったかな……って……』



…あぁ。

どうやら聞き覚えは、あのイタズラ電話の少年の声だったからで。

七星はお店に入店を断るように頼んではないが、店側が面倒が嫌で断ったのだろう。

それを気にして電話をして来るとは、この子も何だかんだダメだと自覚はあったのかも知れない。

同情はしないが、叱ったり怒鳴ったりする気はなかった。