パニックの起きる現場。

私が来た事に驚いてる斗志樹。



「臼杵、準備は良いか」



「はい。事件発生は午後5時42分、マンションの1階住人が帰宅した際、ロビーで異臭に気付いての通報――…」



すぐに冷静さを取り戻した斗志樹に指示を受けた臼杵が、情報を整理して読み上げる。

立て籠もりが起きてるのはマンションの最上階である12階の3号室。

4号室まであるこのマンション。

3号室は左右に窓がなく、リビングとその隣の和室、後は玄関しか突入する箇所はない。



「ちなみに異臭についてはまだ科学処理班が調べてますが、多分、痴漢撃退用のスプレーで、目が滲みたりするようですが、大きな害はないと思われます」



恋愛か、親戚関係の揉め事か。

通報後に部屋を回った管理人の証言では覆面男が包丁を手に出て来たとの事。

奥に女性が居たような気がするが、その女性もこの部屋の住人かは不明。

犯行声明もなく、謎は多い。



「主任と難波で玄関から説得。山下と磯村は4号室のベランダから。俺と臼杵で2号室のベランダから様子を見よう」



「「「『了解』」」」



マスクをし、白手袋を嵌めてマンションへと乗り込んだ。

玄関前にしゃがみ込み、ポスト口から中を確認するも、冷蔵庫などの家電の音しかしない。

専用の器具で覗き穴から中を確かめてた斗真。



「確かに覆面男が1人。他は確認が出来ません」



無線で報告。

私は呼び鈴を押した。