寝返りを打つと、髪の毛に引っ掛かって指輪を下げるチェーンで首が締まった。

チェーンを外しながら、長くなった髪を撫でた。

主任になる事が決まった時、顎の長さまで切ったのに、気付けば肩まで伸びて居た。

指輪を今もサイズの変わらない左手の薬指に嵌めて光に翳す。

磨いてないせいか、眩しく反射する事はない。

斗志樹は今、指輪をどうしてるだろう。

指輪を渡した時、私が結婚したいと思った人に渡すと言ってくれた。

それを自分だと意識して、引き出しの奥でも良いからしまっといてくれてるだろうか。



「愛依!愛依――っ!!」



さっきは呆れてたくせに、1階から慌てたように私の名前を呼びながら階段を上がって来る母親。



「どうしたの?」



「今、斗真から電話で立て籠もりだって!異臭騒動もあったらしいから、すぐに木ノ島4丁目のマンションに行きなさい!!」



「わかった!」



私はジャージを脱ぎ捨て、クローゼットの引き出しから黒のスキニーパンツを取り出した。

Tシャツの上からジャケットを羽織り、靴下を穿いてると母親が鞄を渡して来た。

携帯と財布とハンカチしか入ってないショルダーポーチ。

玄関で帰宅した父親から車を借りて飛び出す。

携帯を開くと、斗真からの着信履歴が並んでる。

電話を繋け、状況を聞きながら駐車スペースを空けさせた。