「私たち、思ってたよりも良い家族たちに囲まれて育ったんだね」



「あぁ。俺、今更だけど祖父ちゃんがめっちゃ好きになった。いつも“苺”ばっか言ってて、山下の祖父ちゃんと顔しか似てなくておかしな人だとも思ってたけど、祖父ちゃんかっけーよ」



祖父母たちは苺を渡される度に“またか”って顔して呆れてたけど、今になってわかる。

あの表情の裏では、愛してたんだろう。

みんな、お祖父ちゃんが大切だったんだろう。



「愛依っ!」



捜索隊が出て来るのを待ちながらお祖父ちゃんの事を思い出してると、後ろから呼ばれた。

振り返ると、我を忘れ、ネクタイを緩め、いつもよりイケてない斗志樹。

七星の存在を忘れ、周りに人が居るのにも関わらず抱き着いて来た斗志樹に、周りは呆然。

私だって、こんな一面があるんだと驚いた。

苦笑いを浮かべた私に、斗志樹は眉間にグッとシワを寄せて怖い。



「焦ったのに何だその顔!お前に何かあったら困るだろ!」



「始末書が面倒ですか?」



「七星。誰もそんな天然求めてない。課長は、愛しい彼女が心配だっただけ。な?兄貴ぃ!」



「触んな!!」



…こいつら、アホ過ぎる。

私は小さな男の子を抱えた消防隊員を見付け、駆け寄った。



「難波主任のお陰で助けられました。一酸化炭素中毒の疑いはありますが、大丈夫そうです」



男の子を抱き上げながら、私に頭を下げて救急車へと運ぶ隊員の背中に、頭を下げ返した。

私は何もしてない。

…助けてくれてありがとう。

無事で居てくれてありがとう。

まだ小さいのに、SOSを出してくれてありがとう。

柄にもなく、涙が出そうになった。

刑事になって熟良かった。



「見過ぎ」



「…………(笑)」



斗志樹とも出逢えたし。