端の木陰に停まるストリーム。

私に不釣り合いと言われる改造車。

車高が下げられ、ホイールが厳つい車。

灰皿は3年も前からそのまま、ヤツの吸殻が残ってる。

ハンドルの右側にある、ドリンクホルダーに置かれたボトル状の灰皿が、私用。



「悠呀ーユウガー……」



ゼブラのハンドルカバーに目頭を押し当てると、涙が出て来る。

毎日5分だけ、悠呀を思い出せる時間を自分に与えてる。

そうじゃないと、気丈に居られないんだ。

“「ダチと会って来る」”……
そう言いながら、笑顔で出て行った悠呀の死を、受け止められて居ないから。



「仕事、戻る……」



ダッシュボードの上にある、悠呀が大好きだった歌手の限定タオルの下に隠した写真に手を当て、声を掛けた。

最初で最後の、2人だけの旅行に行った時の写真。

笑顔だった。

ずっと笑ってた、最後の記念撮影。

手帳に挟まった、3代目“美し過ぎる刑事”として、署内の新聞で2人で撮って貰った物より、大切にしてる。

課に戻り、何事もなかったように仕事へ戻ると、七星がコーヒーを淹れてくれた。



「……ありがとう」



「愛依ちゃんの笑顔、狙ったんだけどな。失敗」



笑顔はどこで忘れて来たのか。

そんなの、わからない。

気付いた時には、こんな私。

父親より。

お祖父ちゃんより。

笑わない。

笑えない、人形。