現役時代に出来た火傷の痕。



「痛むの?」



「感覚ないからわからない」



…そうだった。

神経まで届いてたんだっけ。

今の美容整形の技術を駆使しても、完全に見た目が治る事はないと、言われてたし。

それでも綺麗なんだけど……気になるって事は。



「感覚、戻って来てるんじゃない?」



「今更。戻るなら、もう少し早く戻って欲しかった」



母親は何故、親友を亡くしてもまた笑えるようになったんだろう。

私を見て、何を思ってるだろう。

料理を始めた母親の表情に、悲しみは一切見えない。

父親も帰宅し、19時半を過ぎてようやくご飯。

肉じゃがと、ホッケの干物。

それからほうれん草のお浸しに、アサリのお味噌汁。

自分1人だとなかなか作ってまで食べれない料理が並べられた。



「泊まって行くんか」



「うん。そのつもり」



父親と2人してアサリの身を取り、貝殻を殻入れる作業をひたすら繰り返してると、まだ食べてないのに携帯が鳴った。

私と母親は一斉に父親を見たが、どうやら違うらしい。

次に母親が確かめると、またも空振り。

そうなると、私か。



「もしもし、難波です」



お腹が空いてる時に誰か。

相手を確認せずに電話に出た。



『――てめぇ、どこに居るんだッ!!』



…はっ!??

な、何事……;;