タイムリミットは5分。

タイマーが動き始めた為、赤・青・黄色・緑の線から、迷わず黄色と緑を切った。



「赤か、青……」



過去の統計では赤が多いが、この仕組みは常習犯だろう。

青を切らせて爆発させるかも知れない。

…3分50秒……。

私は赤にペンチを構え、迷う。

爆弾の数だけ解除方法があり、慎重を期するが悩んでる暇はない。



「2分……」



タイマーは更に時間を進める。

でも確か、山下のお祖父ちゃんや父親から何か聞いた事がある爆弾のような気もする。

…何や……。

いつもみんなで集まると、その話もしてた。

でも私は、“またその話か”と途中で聞かなくなってた。



「…………っ、」



「――待てッ!」



後悔の渦の中、爆発しても構わないと切ろうと決意した瞬間、聞き慣れた声がした。

ペンチをコードから離して振り返ると、鞄とジャケットを手洗い場に投げながら、課長が走ってやって来た。



「俺がやるから、お前は逃げろ」



ペンチを奪い取りながら言う課長。

確かに私は迷ってたけど、逃げたくない。

「嫌です」と答えながら、死んだって構わないと自分に言い聞かせる。



「言っただろ。無事に帰って来るなら良い。でもこれは、命をも危ないんだ」



「それでも居ます。私は刑事です」



「難波ッ!!」



「もし逃げて、何かあった時はどうしろと?そんなの嫌!また1人なんて嫌……っ!!」



どうして課長にこんな事を言ったのか。

この時の私に理解は出来なかった。

ただ、課長が居なくなる事を思ったら怖かった。

―――悠呀が亡くなった日よりも。