警察の仕事も、辛い時がある。

助けに行ったのに、攻撃を受けて殉職とか。

撒かれた謎の菌に感染したり。

税金泥棒と罵られたり。

私も何度、言われたかな。

何人の先輩や後輩を失ったのかもうわからない。

最初は泣いてたけど、今じゃ泣かない。

いや、悠呀を亡くした事より受け入れられてるんだ。

変な免疫のお陰で。

ーーピリリリ…ッ

窓の外をボーッと見てると、携帯が鳴り出した。

ジャケットのポケットへ手を突っ込み、取り出した携帯の画面を見れば、課長からの着信。



「もしもし」



『俺だ』



「わかりますよ」



登録してるし、今の時代は画面に名前が出るんだから。



『強盗犯、現逮(現行犯逮捕)したらしいな』



「まぁ。ちょっと時間はかかりましたけど」



『無事なら良い。何があっても、お前が無事に帰って来るなら』



「…………」



予想もしなかった言葉に、思わず黙った。

でも、また課長から人間味を感じた。

誰だって、死を認められない。

怪我なんてしたくないんだから。



「それが私じゃなければ、ときめいてたでしょうね?」



『可愛げねぇもんな』



「そうですね」



楽しいと思った。

言わないけど、ドキッともした。

…この感じ、久しぶり。

悠呀を亡くしてからは、初めてだった。