「刑事なりたての七星は私と。斗真は課長と組みなさい」



「どうして実績のある主任の弟と、俺がペアなんだ」



「貴方が現場に来なくても、1人で動けるからです。私も行けない時、斗真と組ませる為でもありますけど」



私は課長から目を逸らし、チャイムと同時に席へと着いた。

私たちの家族が座って来た場所は緊張感もあり、気が引き締まる。

前年度に引き継いだ書類を見ながら、私は判を押したり、シュレッダー行きかを検討する。



「姉貴」



そこへ、椅子に座ったまま、足で床を蹴りながら斗真が近付いて来た。

「何」と、見向きもしないまま返事をすると、腕を引っ張られた。



「……何なのよ」



斗真の片手には携帯。

嫌でもわかる。



「今日も可愛いだろ?寧々ーネネー」



「わかったから仕事して」



寧々とは、私の姪っ子。

1才8ヵ月の、斗真の子供。

3年前、斗真は刑事へ昇進時に結婚した。

…3年、か……。



「悪い……」



「何が」



「いつも俺のせいで思い出してるだろ?わかってても、つい見せたくて」



「別に。ちょっと出るから仕事して」



私は冷たくあしらい、自分の車のキーと携帯だけを持ち、駐車場へ向かった。