「愛依の力を貸して欲しい。そして、黒田君とこの木ノ島をより良い町にして欲しい」



「……はい」



「1週間で考えて返事をくれ。10月1日に交付したい」



「わかりました」



産休明け初日、私は朝から坂田署長にメールで呼び出された。

そして、仮ではあるが、辞令を言い渡された。

斗志樹の出世を考えて、先ずは副署長にする為、私に刑事課の課長になるようにと。

斗志樹は、我が夫ながら有能なのはわかってる。

けど、課長となると、私は家族をどう妻、そして母親として守れるだろう。

しかし、いきなり斗真や磯村さんを課長と主任席に座らせるなんて、坂田署長は絶対にしない筈。

ここまで順調に、そして確実に築き上げたチームワークを、また新たな人間を上に入れて、活かせるとも思わない。



「復帰早々、ボーッとしてんじゃねぇよ!」



「っと!危ないやろ、斗真!」



「なら、ちゃんと前見ろよ!」



廊下ですれ違った斗真に足を引っ掛けられ、慌てて体制を立て直す。

産後1ヶ月半の姉に向かってする事なのか。

それでも、1児の父親なの?