「すみません。私用でした」



「他に連絡はないから良い。朝礼は終了。難波、ちょっと」



「はい」



特に咎める事はなく、朝礼も終わり。

呼ばれて課長室について行くと、デスクに紙袋を置かれた。



「……これ……」



中身はビールと、仏花。

悠呀君の、墓参り用か。



「明日、非番だろ。俺たちの代わりに、行ってくれないか」



「何で兄貴が行かないんだよ」



「……行くのは簡単でも、あいつにキレそうだ」



「…………?」



「“愛依を連れて行こうとしてるのか”と。そんな情けない真似はしたくないだろ、男なら。結婚までしたと言うのに」



「まぁ。男のプライドだな」



「おい!山下、大丈夫か!?」



「「…………」」



兄貴の気持ちは理解出来た為、紙袋を受け取るかどうかを迷ってると、磯村さんの慌てた声が聞こえた。

兄貴と目を合わせ、やれやれと課長室を出る。



「――止めてよもうッ!!」



「煩い!俺は情けない!こんな息子に育てた記憶はねぇぞ、七星!」



目の前に広がる光景は、何とも想定外。

お袋が叔父さんを取り押さえようとし、叔父さんは七星を殴り掛かろうとし。

七星は既に1発殴られたのか、口端が切れて血が滲んでる。