「今まで、会わなかったのが奇跡だな」



「命日にちゃんと来たのは、1周期だけだったので。去年は前日しか無理だったし、悠呀のイタズラかも知れないですね」



喫茶店を出て、助手席に鞄を乗せながら答える。

黒田さんは悠呀がお気に入りだったホイールを一撫でして、自身の車へと足を向けた。



「またな」



「はい。また明日」



黒田さんと別れ、私はお墓へと戻る。

さっき出来なかったお墓掃除と、ビール掛けをする。

お花の処分は寺院の関係者さんがやってくれるけど、飲み物や食べ物は持って帰らなきゃいけないルール。

ゆっくりと、時間を惜しみながらビールをお墓へと流す。

お酒はあまり強くない人だったけど、ビールには目がなくて。

コンビニやスーパーなどで海外のビールを見付けると、子供のように目を輝かせてたね。



「仲良く見えてたけど、課長とは共通点が見当たらないよ」



あの人はクールな人。

けど、悠呀は熱かった。

頭で考えて動く慎重派の彼と、悠呀が?って思うけど、悠呀は意外と人を簡単に信用しない一面があったから、課長には信用出来たんだよね。

裏表を感じない、ハッキリと物申す姿勢に嘘とか影はない。

私も何だかんだ言ったって、今日だけでも信じれたもの。

黒田斗志樹という人をね。