「愛依……っ」



私の頭をくしゃくしゃと撫で、頬と頬をくっつけて来た母親が、父親を見ると、珍しく笑顔。

歯は見せなくとも、綻んだ顔で頷く姿は、母親を讃えて居るのかも知れない。



「小宮さん、タクシーつかまえますから。表までお送ります」



「はい……。本当に、すみませんでした……」



七星が小宮さんを立たせ、支えて課を出て行く。



「捨てとけ」



「――ぶね!;;だいたい、何で居るんだよ?親父はともかく、お袋は仕事だろ?」



父親がハンカチに包まれた包丁を勢いよく斗真に差し出すと、刃先から身を避けながら受け取る。

そして、もっともな疑問をぶつけた。



「斗志樹の代わりに、親が愛依を守らなあかんやろ」



「母親の勘は、鋭いものなの。あんたのエロ本の隠し場所なんて、一瞬でわかるんだからね!」




「……斗真君のエロ本と主任と、何の関係が……?」



「臼杵さん、今は持ってないですから;;」



「食い付くとこ違うやろ」



「……え?そうなんですかっ!?」



「「――解散」」



アホ2人に呆れたのか、真顔で告げて帰って行く両親。

…ありがとう。

お父さん、お母さん……。

斗志樹も、ありがとね……。