「娘の旦那さんじゃなくても思いますが、そんなに大切に想う人が居る斗志樹君を無理に傍に居させても、何が出来ますか?苦しいだけじゃないですか?」



「……そんな事は、わかって……」



「――わかってない。貴方はわかってない!貴方が前を向いてないのに、娘さんが顔を上げると思います?貴方が呼ばなきゃいけない。貴方が!私、斗志樹君を義理でも、本当の息子のように好きです。可愛いです。だけど、手柄を譲ったつもりは全くないですよ?娘がまた立ち上がったのは、私たち親のお陰でもあると。お腹を痛めて産んだ子じゃないですか!娘を見つめる目、包み込む手……何より、心には、斗志樹君に勝る愛がある。自信を持って、向き合いませんか?」



「……っ……、ごめんなさい……っ。ごめんなさい、愛依さん……っ……」



「もう、良いです……っ。小宮さんの、斗志樹を好きになった気持ちは、わかるから……っ……」



「本当に……ごめんなさい……っ゛!!」



母親の言葉が、ようやく小宮さんのお母さんに届いたのか。

赤いピンヒールのパンプスを抱き締めながら、絨毯張りの床に額をくっつけて謝る小宮さんのお母さんを、許さないなんて、私には出来ない。