何故か彼から目を背けない。

同じ傷を。

いや、私以上に傷を負ってる気がした。



「悠呀が事故に遇った日」



「え……?」



「俺はあいつと居た」



「……嘘」



「だから葬儀に行けず、病院に居た」



「一番の後悔」だと付け足し、コーヒーを飲む課長。

私から顔を背けたけど、溢れた一筋の涙。

この涙を、私は一生忘れないだろう。



「目覚めて悠呀が即死だったと聞いた時、無性に死にたかった。死ぬべきだったのは、俺だと」



その時、私は彼の手を反射的に握った。

苦しかった。

それは私だって。

でも、死ななくて良かったとも思う。



「そんな事、悠呀が聞いたら怒りますよ」



「だろうな。あいつの性格上」



「私は刑事課をより良い場所にしたいと思ってます。黒田さんとなら、今は出来ると思います」



銃を向けられても、誰も死なせない。

命懸けでも、死に負けないように、私たちには出来ると思う。



「……恨まないのかよ」



「私が憎いのは、轢き逃げをした犯人だけです」



悠呀を殺した犯人。

課長を苦しめた犯人を、許したりはしない。

共に事故に遭った呼び出しただけの課長が悪いなら、あの日止めれなかった私も悪い。

2人の重なった休日だったのに、「いってらっしゃい」と普通に見送った私も。