あまりの苦しさに涙が溢れる。

磯村さんによって、口元に宛がわれた袋。

救急の研修か何かで、袋を宛てる事に効果はないと聞いた事もあるが、呼吸は落ち着き、過呼吸に陥ってた事がわかった。



「はぁ……はぁ……っ」



「大丈夫か?」



「うん……。何とか……」



斗志樹に支えられたまま、床に腰を下ろす。

クリアになる視界。

深く呼吸をすると、気持ちが落ち着く。

いつもの冷静さが戻った。

どっと疲れる身体を斗志樹に預けたまま小宮さんに視線を向けると、お嬢様らしさがなく、般若のお面のように怒り顔でこちらを見てた。

かといって怯むわけではないが、課の電話が鳴った為に目を背けた。



「木ノ島警察刑事課」



電話に出る七星。



「……無差別?」



応対しながらも、固まってる七星。



「――替われ」



磯村さんが七星から電話を奪い、先輩らしく対応するも、様子が変わった。

恐る恐る、先に立ち上がった斗志樹の腕を掴みながら立つ。



「課長。木ノ島駅前の通りで、男が無差別殺傷して暴れてるそうです……」



…木ノ島で……?

治安は割と良い場所で、そんな事が起こるなんて今まで想像すらしてなかった。

刑事課の面々だけでなく、周りのみんなも呆然としてしまった。