「君と兄貴は愛し合ってなんかない。つまり子供が出来る筈がない。今ならまだ取り返しが付く。大人しく帰れ!」



「どうしてよ!貴方が私と斗志樹さんの何を知ってるの!?」



「兄貴の事は知ってる」



「でしょ?私と斗志樹さんの事は知らないんだから黙っててよ!!」



もう、誰にも止める術はないのだろうか。

斗志樹が言っては、恋愛妄想という病の力で良い方向に解釈してしまう。

私が言っては、状況が悪化するだけだろう。



「斗志樹さん、貴方ならわかるわよね?!昨日も私をあんなに愛してくれたじゃない!情熱的だったわよね?私を愛してるって。私だけを愛してるって抱いてくれたわよね!!」



「……止めて……」



「愛依、耐えるんだ」



いくら妄想であっても、斗志樹と愛し合ったとか聞きたくない。

彼女の妄想に頭を狂わされるなんてご免。

なのに、頭がクラクラとし、斗志樹に支えられながらゆっくりとしゃがむ。



「斗志樹さんは私が好きなのよね?」



「…………」



「斗志樹さん!ねぇ、斗志樹さん!」



「――…っはぁ!!?;;」



「愛依、息しろ!!」



相手にしてはいけないと、自分に言い聞かせながらも、反論しそうになった。

なのに、急に苦しくなる息。

斗志樹に息をしろと言われても、してるつもりなのに死すら思い浮かべる程に苦しみは増す。