何しに髪を切っただけでモテるのか。

誰かに特別優しくしたとかないし、出会いがあったわけでもない。



「斗志樹。私のデスクナンバーが本当に流出してるか調べてよ」



「あぁ」



斗志樹は私の願いを聞き入れ、雑誌を閉じて立ち上がった。

私のパソコンを使い、私の旧姓で検索をかける。



「これ、ヤバいだろ……」



斗真と斗志樹の後ろからパソコン画面を覗き込むと、検索結果は数百件にも及んだ。

だが、電話番号が載ってるものは見当たらない。

名前と電話番号で検索し直すと、件数はグッと減り、元々は“オタクなマークンのブログ”というブログに行き着いた。



「……マークンて、誠君?;;」



「いや……。この子もどっかのサイトから、写真や番号を入手してる」



それは闇サイトだったのか、誠君と思しきマークンが載せてるURLのサイトは既に閉鎖済み。

斗真も自身のパソコンで検索を始めると、1人の男のSNSに辿り着いた。

特攻服姿の古い写真を使ったアイコン。

“幸せにしたい女”という呟きと共に、私の写真とデスクナンバーが載って居た。



「これはヤンチャしてた時の話だ。この人は俺が怪我させた白バイ乗りの彼女だったらしい。お見舞いに来てた姿を見て、かなり胸が痛んだ。俺にも良心があったようだ。その人について調べてたら、どうやらこの時の男が死んだようだ。悲しい顔してた。だから誰か、この話を知らなかった事にして出会ってやってくれ。助けてやってくれ。電話番号も載せとく。幸せにしてあげてくれ」



…何様だ、こいつ。