「ちょっと、1周して来ます」



「斗志樹……?」



「夜風に当たるだけだ」



私が自分も外で視線を感じてた事を伝えると、徐に立ち上がった斗志樹。

不安で腕を掴むも、煙草を銜えてリビングを出て行ってしまう。



「じゃ、私も行こうかな」



何を思ったのか、新しいロングコートを羽織って出て行く母親。

リビングの窓からは、斗志樹に声を掛けながら歩く母親が見えた。

玄関にコートを置いといたけど、本当に大丈夫だろうか。



「お母さんじゃなきゃ良いけど……」



七星からの電話の後で敏感になってるのか、母親が心配でならない。

現役を引退して20年あまり。

誰かに恨まれる事はなかった筈だけど、その逆。

…ストーカー?

いや、確かに若々しく、孫が居るような人には見えないけど、あり得なくはない。

だとしたら父親も同じだが、この人を追い掛けるような真似する勇気を持った人なんか居ない。




「俺も見て来るか」



「……帰って来たけど;;」



斗真も行こうとすると、何事もなかったのか、笑顔で談笑しながら帰って来た2人。



「誰か居たか?」



「全く。似た者同士、今回は空振りなようね」



「「…………」」



それなら良いんだけど、父親のあの本気さが勘違いだとはどうも思えない。

少し、様子を見た方が良いかも知れない。

母親に何もないように。