幼い頃から、母親の姿を見て来た。

朝のメイク前。

夕方、帰宅してからすぐにメイクを落として。

夜もお風呂上がりにずっとマッサージを繰り返してた。

「上手く笑えないママでごめんね」と謝られた日もあった。

それでも母親は綺麗で、私たち姉弟の自慢だったから気にしてなかったけど、本人は違った筈。



「祖父様と祖母様、仲良しだね!」



「パパもママも仲良しだろ?」



「寧々とママの方が、仲良しだもーんっ!」



ガクッと肩を落として、落ち込んだフリをする斗真とハイタッチ。

家族が1人2人と増えて行くと、どんな風になるのか考えてもわからなかった。

私たち姉弟は疎遠になるのか。

実家には帰らなくなるかもとか思ってた。

でも、こんなにも幸せな時間が過ごせるなんて。



「何でそこがイチャイチャしてんだよ!」



「ただ寄り添ってるだけですけど?」



一つの膝掛けに2人で包まってると、斗真から野次が飛んで来た。

けど、父親が急に立ち上がって庭を気にする素振りをして場の雰囲気が変わった。

窓を開け、庭に出てガレージを確かめてる。



「どうしたの?」



「何や妙な視線を感じた」



…そう言えば……。

母親の問い掛けに、父親はハッキリと言い切る。

気のせいではなかったのだろう。

そして、私が感じた視線も、気のせいではなかったのかも知れない……。