冥王星

遠くで鳴っていた稲妻が近づいてきた。

俺がもう一度又三郎の手を握り返すと、
雷は頭上でとどろいた。

あまりの轟音におどろいて
又三郎はしがみついてきた。

「又三郎、この雷・・・」

「ミゲーレ、怖いよ。怖いよ。
助けて。」

恐怖からのがれようと、
俺の体にしがみつく。

雷は相変わらず頭上で爆発している。
落ちてきそうだ。

「まて、又三郎。落ち着くんだ。」

俺は又三郎の体を
静かに自分の体から引き離した。
又三郎の両腕をつかんで向き合った。

「この雷はおまえの力なのか?」

「わからない。」

「静かに、静かになるんだ。」

俺は又三郎の目を覆った。
又三郎の見るものを恋狂わせるような
瞳を閉じた。

そして又三郎の頬から顎を
静かに撫でた。

又三郎はひとつの深い呼吸をした。

雷は次第、次第に遠ざかっていく。

こんな季節に、まるで夏の嵐のような
雷が鳴るのはおかしい。

又三郎は頬に触れている俺の手を取り、
手のひらにそっとくちづけをした。
まるで俺の体温を自分に注ぎ込むように
じっとしていた。

その閉じた目の長い睫毛に
俺は見とれるのだった。

「怖いんだ。自分の力が。
何が起こるかわからない。

ミゲーレ、僕のことを抱いててね。
僕が暴走しないように。
僕が誰か傷つけてしまうことがないように。」

そういって又三郎は俺の体に手を回してきた。
俺は力ずくで抱きしめたくなったが、
自分を抑えて、そっと又三郎の後頭部を撫でた。

「俺におまえを抑える力なんかないよ。
おまえが、自分で自分の力をてなずけなきゃ。」

「どうやればいいの?」

「ニコルが言ってたろう。
まずは自分の力を自覚するんだって。
自分から目をそむけるなよ。」

しばらくの間又三郎は内省しているようだった。

「僕は本当は、破壊なんだろうか?」

「どういう意味?」

「破壊が、僕という衣をまとっているのだろうか。」

「難しいことを言うんだな。」

俺は又三郎の体に触れてみた。
腕から肩、首から背中。
手のひらで又三郎の体の中身を見つめた。

又三郎の体の中にはやさしい血と筋肉が巡っていた。
そして激しく鼓動する心臓をその体に内包していた。

破壊なんてものは微塵もない。

「おまえの破壊力は、一つの要素でしかない。
それに振り回されるなよ。」

又三郎は俺を抱く腕にいっそう力を込めた。
いつまでもそうしていたかった。

「そろそろ戻ろう。
またニコルにうるさく言われちゃうからな。」

俺たちはまた狭い出入り口から這い出て、
それぞれの寝室にもどった。