冥王星

午後の労働が終わるころ、
俺はニコルに呼び出された。

やはり、少年宿舎のぼやさわぎは
こいつの耳に入ってしまったか。

又三郎も同じく呼ばれていた。

「貴様らは、少年宿舎に行ったのか?」

「そうだ。」

「何をしに?」

「子供たちに幻灯を見せる約束を
してたんだ。」

「まず、一般修道士が勝手に
少年宿舎に入ってはいけない。
わかってるな。」

「はい。」

「それから、火が出たときいたが
どういういきさつだ?」

「それが、わからない。
突然炎が現れたんだ。」

俺はこう答えた。

「又三郎」

ニコルは又三郎を見つめた。

ニコルは俺と同い年だったが
寮長という役職にあった。

一般修道士の管理をまかされていた。
一人一人の経歴、ベッドの場所、
現在の担当職、など把握していた。

又三郎はうつむいている。
見つめているニコルのまなざしが
熱をおびてきた。

この又三郎という奴は
見るものを狂わせるのか?

「君は、俺よりも前からここにいたな。
5歳でここに来た。

君には不思議な力があるときいた。
だが、幼い君の力は暴走し、
君のご両親は手に負えず、
君をここへあずけた。

そうだったよな?」

「はい。」

「あの火事は君の力なのか?」

ニコルは心配そうに
そして愛しそうに又三郎に語りかけている。

俺は自分が嫉妬していることを
自覚した。

「わからない。自分で、
そんなつもりは全くなかったんだ。
ミゲーレの、幻灯に夢中になっていて。」

ニコルの視線が俺に刺さる。

「ここへ来てから、
君の力はほとんど封印されていたんだよな?」

又三郎はだまってうつむいている。
そしてしばらくして口を開いた。

「一度だけ、不思議なことが起きた事があります。」

「それはいつ?」

「ここへ来てそう経たない時です。」

「どんな状況だった?」

又三郎はまた黙した。
少し待ってから、
ニコルはふうとため息をついた。
もう又三郎から話を聴きだすのを
あきらめかけた。

「寮父さまが、僕の体を触ろうとしたんです。」

俺もニコルもごくりと喉を鳴らした。

「そのとき、爆発のようなものが起きて
寮父さまは大怪我をしました。」

今度はニコルが黙ってしまった。

又三郎のような少年が、
こういうところへ来て、
衆道の餌食にならないわけがない。
魔力のおかげでここまで無事にこれたのだろうか。

そういえば、最初に又三郎に出会ったとき、
竜巻が起きた。
あれも又三郎の魔力だったのだろうか?