風がでてきたな。

ここはとても風が強い。
夏が終わり、
巡礼客も波が引くように少なくなった。

夏の終わりの
少し弱くなった陽光が俺は好きだ。

仕事の合間におもてをぶらついていると、
城壁の上でぴょんぴょん踊るように
飛び跳ねている男の姿があった。

一瞬、qに見えた。
だが、ちがった。

待てよ。
そこは断崖絶壁。
城壁のはるか下は海だ。

あいつ、何をしてるんだ。
俺は走っていった。

「あぶないぞ。降りろ。」

城壁は俺の頭の高さより上だ。

「ミゲーレ!!」

城壁の上にいたのはまだ小僧だった。
そいつは俺の名を呼んだが、
俺はそいつを知らない。

そのとき、強風が海から吹き上がり、
小さな竜巻が起こった。

小僧が吹き飛ばされ、俺の上に落ちてきた。
小僧もろとも俺は石畳の上に転がった。

「おまえ、何やってたんだよ。下、海だぞ。
あぶないじゃないか。」

そう言いながら目の前の小僧の顔を見たとき、
吸い寄せられそうになった。

美しい。