冥王星

週に一度の全体礼拝は朝の三時半から始まる。
正装して大聖堂に全員が集まる。

ミサを執り行うのは大司教オーベール師。
オーベール師とは命名式の時以来個人的に話したことはなかった。
この修道院に入ってしまうと師は雲の上の存在になった。

祭壇の真ん中にオーベール師。
その両側に司祭、助祭が並ぶ。

トラビス助祭の姿はない。
一番端の席が空いたままになっている。

(なんか、そんな気がしたんだよ。)

ツチノコ司祭が弟子に部屋を見に行かせたが、
ミサは時間通りに始まった。

トラビス助祭を欠いたまま、ミサは進められた。

ミサが終盤にさしかかったころ、大聖堂の大扉が開き、
トラビスが入ってきた。
きちんと正装していた。

トラビスが聖堂の真ん中の通路を祭壇に向かって歩み進めていく。
オーベール師はミサを中断した。

トラビスは祭壇の師に向かってひざまずいて言った。

「礼拝に遅れて申し訳ありません。」

「どうしたのかね?」

トラビスは立ち上がった。

「娼館に行っていました。」

オーベール師はゆっくりと祭壇を降り、トラビスの傍らに立った。

「もう一度言ってくれるかね?」

「娼館に行っておりました。」

水を打ったように聖堂内は静まりかえっている。

オーベール師は帽子を脱いだ。
あの、大天使ミカエルに突かれたという額の穴が現れた。
それが、まるで第三の目のようにトラビスを見つめている。

「トラビスに、一般修道士への降格を命ずる。」

大きな声で師が言った。

「はい。」

トラビスは師に深く礼をして、聖堂を去っていった。

「ミサをつづけよう。」

オーベール師は何事もなかったかのようにミサを再開した。