冥王星

その夜、ルイーダの店にいた。
剛力は俺に自分の武勇伝を語って聴かせるのが好きでよく誘われた。

酔うと同じ話ばかりするのでいいかげん飽きていた。
もう帰りたいな、と思っているとき、店に入ってくるものがあった。

トラビスだった。

「こんばんは」

ルイーダが声をかける。
またツチノコの発注を持ってきたのだろう。

いつもは封筒を渡して去っていくだけのトラビスが、
ルイーダに向かい合わせて立った。

「今夜、ヴェロニカは空いてますか?」

「ええ。」

ルイーダは少しとまどった。

「ここへ呼んでいただけませんか?」

わかったわ。といってルイーダはカウンターの奥にもぐりこんでいった。
剛力も、俺もトラビスも何も言わなかった。

少しするとヴェロニカが来た。
トラビスの前に立った。

「こんばんは。どうしたのかしら?」

「あんたを買いたい。」

「あら。」

「いくらだい?」

「8よ。」

トラビスは胸元から革の財布を取り出して八枚の紙幣を渡した。

「お客様は、上の入り口からどうぞ。」

そう言って、奥に姿を消した。
トラビスもだまって出て行った。

「驚いた。トラビスが?」

剛力が言った。俺は何も言わなかった。

残された三人は、何か居心地の悪い空気に支配された。
ルイーダが何か話題を提供しようとしても、
会話はすぐに途絶え、沈黙がちになった。

「俺、そろそろ行くわ。」

俺は席を立った。

「そうだな。明日は朝の全体礼拝があるし。」

剛力もそう言って二人とも帰った。