冥王星

翌朝、いつもトラビスに聖書の講釈を受けている時間。
俺は読書室で待っていた。

ゆうべ、あれからどうなったのか。
想像は難しくない。

どこか人目の付かないところで、二人で過ごしたのだろう。
そして交接したことだろう。

なかなかトラビスは現れなかった。
落ち着かない。

ミサもすっぽかして、俺の講義もすっぽかして、
あいつは弱いんじゃないか?

(ミゲーレ、トラビスを探そう。)

(とくに騒ぎにもなってないし、
ゆうべはちゃんと帰ってきたんじゃないか?)

(なにごとかが、トラビスの身に起こっている。)

(q、おまえ、そんなことわかるのか?)

(とにかく探そう。)

だがあっさりとトラビスは見つかった。
あの、空中回廊の、海端に後姿があった。

それを目にした瞬間、俺は大声で言っていた。

「汝、殺すなかれ!」

トラビスが振り向いた。
寝間着のままだった。
その姿はすでに冥府にいる人のようだった。

俺が近づいていくと言った。

「金を取られたよ」

絶句した。

トラビスは胸にかけている木製のロザリオを引きちぎって、
海に投げた。

こいつ、自分の十字架を放棄した。