起床は三時だった。

朝食の前にヘブライ語の勉強をさせられた。
ヘブライ語は今では使われていない言語だが、
ここの経典はほとんどヘブライ語で書かれているため、
まずはこれができないと話にならないのだ。

俺にヘブライ語を教えてくれるのは、
まだ十歳くらいの子供だった。
眼鏡をかけているので博士というベタな渾名がつけられていた。

しかしこいつは博士とよばれるにふさわしい天才児だった。
でも教えることに関しては下手で、
こいつの教授は非常にわかりにくかった。

「ミゲーレ、ここは昨日やったところだぞ、忘れたのか?」

自分が天才、秀才ということを自覚していて、子供らしくない。

「忘れた。」

「じゃあ、今日はもう終わりだ。先に進めないからな。
明日はちゃんと進めるように、ここまでは完璧にしとけよ。」

なんという、生意気な。
でも奴のいうことに間違いはない。

「わかった。また明日よろしくたのむ。」

そう言うしかなかった。

博士はごく幼少のころからヘブライ語に慣れ親しんでいるので
できない者の感覚がわからないのだ。

ほとんど独学に近いやり方で勉強するしかなかった。
とにかく暗記だ。

手の空いた時間にヘブライ語の経典をいつでも見れるように、
ベルトの背にはさんでいた。