冥王星

遠い鐘の音で目が覚めた。

俺が体を起こすと、
ヴェロニカが入ってきた。

「あら、起きてた?」

「ああ。

じゃあ、俺行くわ。
今日は世話に
なっちまったな。

ありがとう。」

「次からは必ず
ルイーダをとおしてね。

私、あの人とは
もめたくないから。」

「わかったよ。」

だが俺は、
もうここへ来るつもりはない。




俺は人目につかぬよう、
小走りで修道院に
もどった。

城壁に
縦に開いた裂け目から
頭を出し、
再びこの共同体の中に、
生まれ出た。

地面には、
先ほど脱ぎ捨てた
ローブがそのまま落ちている。

俺はそれを再び着た。

なんだか、
頭の中が澄んでいる。

この抜け穴を出るとき、
混沌としていたものが、
整理整頓されている。


もう夕餉の時間だ。
俺は食堂に行った。

そういえば、
朝も昼も食っていない。

空腹だったが、
食欲はない。

混雑した食堂の、
食事の受け取り口から、
忙しく立ち働く
又三郎が見えた。

そのとき、
苦しくなった。

今すぐにでも行って、
抱きたい気持ちがある。

そして、
俺に対して殺意を持った
という事実がある。

それがわだかまっていた。

長机の隅で
食事を体に押し込んでいると、
不思議な光景を見た。

ゲドウが、
食堂にやってきたのだ。