次の朝、
俺は自分から話し始めた。
「親兄弟を殺したことは、
いいことではない。
でも俺は、
悪いことでもないと思う。」
ゲドウの動きが止まった。
「それがおまえに
必要なことだったからだ。」
俺はポーズしたまま
ゲドウの目を見た。
ゲドウが、
ぼとりと絵筆を床に落とした。
「おまえは、親兄弟を愛していた。
殊に母親を。」
ゲドウはいすから落ちて
這いつくばった。
「だけどもう愛情に変えることは
できないな。
殺してしまったんだから。
もうこの世にいないのだから。」
そう言って、激しく嗚咽した。
俺はゲドウの傍らにかがんだ。
そして、いままでに一度も
誰からも触れられたことの
ないような、その体に触れた。
ゲドウの背をさすると、
俺のひざにしがみついた。
そして声を殺して泣いた。
しばらくそうしていると、
工房の扉が開いた。
「朝食だよ!」
又三郎が入ってきた。
又三郎は目にした光景に
おどろき、食事を乗せた盆を
落としてしまった。
「何してるの。」
俺がまなざしで
説明しようとする前に、
ゲドウが、地の底から
聞こえてくるような
声で言った。
「こいつにカマを掘られたのさ。」
「馬鹿!何言ってるんだ。」
俺は言ったが、
又三郎は半信半疑で
こちらに近づいてくる。
ゲドウは顔を又三郎に
振り向けてさらにたたみかけた。
「おまえのあんちゃんは、
よかったぜ。」
又三郎の目は思い切り
見開かれた。
「又三郎!信じるんじゃない。
こいつは嘘を言ってるんだ!」
俺はそう叫んだ。
だがその時、
又三郎の額には無数の
稲妻のようなしわが刻まれた。
そして牙をむく肉食獣のような顔で
俺を見た。
割られる!!
俺の脳裏には、
寝室で又三郎を襲おうとして
頭を割られた男の姿が浮かんだ。
又三郎の両の眼から
強い閃光が放たれる。
俺は両手で頭を覆い、
体を縮めた。
強く目を閉じる。
しばらくの間、そうしていた。
だが、何かが起こっている
様子はない。
俺は恐る恐る目を開けた。
真顔で立っている
又三郎の姿が見えた。
俺が顔を上げると
又三郎は走り去った。
俺は自分から話し始めた。
「親兄弟を殺したことは、
いいことではない。
でも俺は、
悪いことでもないと思う。」
ゲドウの動きが止まった。
「それがおまえに
必要なことだったからだ。」
俺はポーズしたまま
ゲドウの目を見た。
ゲドウが、
ぼとりと絵筆を床に落とした。
「おまえは、親兄弟を愛していた。
殊に母親を。」
ゲドウはいすから落ちて
這いつくばった。
「だけどもう愛情に変えることは
できないな。
殺してしまったんだから。
もうこの世にいないのだから。」
そう言って、激しく嗚咽した。
俺はゲドウの傍らにかがんだ。
そして、いままでに一度も
誰からも触れられたことの
ないような、その体に触れた。
ゲドウの背をさすると、
俺のひざにしがみついた。
そして声を殺して泣いた。
しばらくそうしていると、
工房の扉が開いた。
「朝食だよ!」
又三郎が入ってきた。
又三郎は目にした光景に
おどろき、食事を乗せた盆を
落としてしまった。
「何してるの。」
俺がまなざしで
説明しようとする前に、
ゲドウが、地の底から
聞こえてくるような
声で言った。
「こいつにカマを掘られたのさ。」
「馬鹿!何言ってるんだ。」
俺は言ったが、
又三郎は半信半疑で
こちらに近づいてくる。
ゲドウは顔を又三郎に
振り向けてさらにたたみかけた。
「おまえのあんちゃんは、
よかったぜ。」
又三郎の目は思い切り
見開かれた。
「又三郎!信じるんじゃない。
こいつは嘘を言ってるんだ!」
俺はそう叫んだ。
だがその時、
又三郎の額には無数の
稲妻のようなしわが刻まれた。
そして牙をむく肉食獣のような顔で
俺を見た。
割られる!!
俺の脳裏には、
寝室で又三郎を襲おうとして
頭を割られた男の姿が浮かんだ。
又三郎の両の眼から
強い閃光が放たれる。
俺は両手で頭を覆い、
体を縮めた。
強く目を閉じる。
しばらくの間、そうしていた。
だが、何かが起こっている
様子はない。
俺は恐る恐る目を開けた。
真顔で立っている
又三郎の姿が見えた。
俺が顔を上げると
又三郎は走り去った。

