亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


窓から入り込む夜気でかじかむ程冷たくなってしまった手。



ふと、その手に…………包み込む様な暖かい手が、重ねられた。
ビクリと震え、思わず手を引っ込めようとしたが、重ねられた手は逃がすまいと、ギュッと握り締めてきた。



……顔を上げると、薄明かりに照らされた真剣な面持ちのキーツが、ローアンを見下ろしていた。




「……………そんな……………事を言うな………!」



キーツは握り締めている手の力を緩め、再度その白い肌に重ねた。






「………違う………。………王族だから………王族だから…じゃない。………………………………君だから…。………君だから………守るんだ…!」






身体が、震えた。















「…あの夜の事を、俺は…忘れた事なんか無い。あの夜………地獄の様な光景の中……たった独りで……父も殺され……それでも、走って…………俺は…………君を見つけた…」

……今でも鮮明に蘇る、あの日の記憶。
瞳に焼き付いた光景は、いつ何時でも、自分を苦しめた。




「………だが………守れ…なかった。………何も出来ない、子供であることを………無力だったことを………俺は…憎んだ……。…………………好きな女一人守れなかった!!…俺はあの時………君を見殺しにしたんだ!!殺してしまったも同然だったんだ!!……………だから………俺は……復讐を誓った!………この国のため…民のため……そんな綺麗事…嘘だ!!………俺は……俺の頭には、復讐しかなかった!!」







君を失った悲しみと、君を殺してしまった自分への怒り。






―――人間は、全て、自分に都合の良い方へと考えてしまう。


込み上げる憎悪を、正義なんていう言葉の裏に隠していたに過ぎないのだ。