―――…途端、この二人以外誰の存在も許されない筈の神聖な空間に………………扉の開閉音という、なんとも似合わない音がバーンと無遠慮に響いた。
「ようやく見つけましたぞ!母君様の首飾りで御座います!いやぁこの歳になりますと、もう暗い廊下は例え真直ぐでも、歩き辛く思えますなぁ。先程も火が灯っていないランプに頭をぶつけまして。…こう見えても若い頃は『夜型のアっちゃん』と呼ばれる程夜目には自信があったのですが………いやはや老いとは恐いもの。色々なものを喪失していきますなぁ。記憶力だとか、運動神経だとか……ああ、つい先日なんぞは、オーウェン様に空気を読む力が無くなっているとまで言われましてなぁ。このアレクセイ、ちょっぴりショックと言いますか。アッハッハッハッハ…………………………ハァ…………………………………えー………………………私、また何かまずい事をやらかしましたかな………?」
爽やかな笑みを浮かべながらアレクセイは室内を見渡した。
正面右の鏡の前には、真っ赤に顔を染めたローアンが立っており、反対側の正面左には、ソファに俯せになって顔を埋め、何故か震えているキーツ。
………アレクセイはぶわっと冷や汗をかいた。
そして何ともぎこちない動きで、何故かここにいるキーツに視線を向けた。
「……………………キーツ様…………何故…こちらに……」
ソファを叩く音がした。
「……………何っでもない……何でだろうな?何でだろうな―?」
………明らかに不機嫌な口調だった。ちらちらと見える表情は笑みを浮かべているが……こめかみ辺りに青筋が見える。

