亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「………共通性も無けりゃ、一文字の形もはっきりと分かっていない…………創造神アレスの言葉……読めないだろ?………俺も分からない」


………じっと見ていると、石碑の文字が広大な星空に見えてきて、訳が分からなくなった。


「………でも、アレスの書は皆内容を知っているよ?……誰かが訳したから分かってるんじゃ…」

「………キーツ…お前知らないのか?……このアレスの書を読めるのは、王族の人間だけだ。…不思議な事にな…」

「………王族…だけ」

―――王族の血を引く者。

アレスに選ばれた人間だけが、アレスの言葉を理解出来るのだ。



「……神様は人見知りが激しい。………プライベートはお気に入りだけってか?…どう読むんだか…教えてもらいたいね」

「……他の大国二つも、王族しか読めないんだ…」




アレスの書は、この世界に於いて絶対的な掟、ルール。



………今はどの国も、王族は廃れてしまっている。









「いろいろ言い伝えがあるんだよ…。―――『天の息吹』を知ってるか?」

キーツは首を横に振った。

非現実的な神話めいたものには、あまり興味が無かった。