ルアとトゥラの元に駆け寄ろうとしたローアンの前に、真っ黒な魔方陣が浮かび上がった。
……行く先を遮られ、立ち止まるローアン。クライブの方に視線を移すと、彼は真直ぐこちらへ歩み寄って来ていた。
「………自分の心配をしたらどうだ?……もう…丸腰ではないか………フフ……」
クライブの言う通り、ローアンの武器は今投げた短剣のみだった。
………何も無い。丸腰の状態では、攻める事も防ぐ事も出来ない。
………絶望的な状況だ。
ジリッ…とローアンはゆっくりと後退した。
一歩下がれば、クライブは一歩進む。広がりも縮まりもしない互いの距離。
………鼓動が、やけにうるさい。
指先が痙攣しているかの様にカタカタと震えているのを、ギュッと拳を作って隠した。
「―――……夜明けも近い。……………さっさと終わらせてもらおうか………。…………………私は………太陽が嫌いだからな……」
スッと…クライブは手を振った。
―――ブンッ…と、ローアンの足元に、魔方陣が浮かび上がった。
「………」
「………さて………どういった……死に方をしたいかな………?………ハハハ……」
彼が少し指先を振るうだけで、足元の魔方陣に何やら新たな古代文字が刻まれていく。
………どうする事も出来ずに、ローアンはただじっと佇んでいた。
………ローアンの視線は一瞬だけ、クライブの後方にある高い玉座に向き…すぐに戻った。
「…………ユリアクロウ…」
そう呟くと、クライブは冷たい笑みを引っ込めた。
ぼんやりとした、虚ろな瞳だ。
「………………その名は……嫌気がさすな……」

