亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



ルアとトゥラの元に駆け寄ろうとしたローアンの前に、真っ黒な魔方陣が浮かび上がった。

……行く先を遮られ、立ち止まるローアン。クライブの方に視線を移すと、彼は真直ぐこちらへ歩み寄って来ていた。


「………自分の心配をしたらどうだ?……もう…丸腰ではないか………フフ……」

クライブの言う通り、ローアンの武器は今投げた短剣のみだった。
………何も無い。丸腰の状態では、攻める事も防ぐ事も出来ない。


………絶望的な状況だ。



ジリッ…とローアンはゆっくりと後退した。
一歩下がれば、クライブは一歩進む。広がりも縮まりもしない互いの距離。


………鼓動が、やけにうるさい。

指先が痙攣しているかの様にカタカタと震えているのを、ギュッと拳を作って隠した。



「―――……夜明けも近い。……………さっさと終わらせてもらおうか………。…………………私は………太陽が嫌いだからな……」














スッと…クライブは手を振った。








―――ブンッ…と、ローアンの足元に、魔方陣が浮かび上がった。

「………」

「………さて………どういった……死に方をしたいかな………?………ハハハ……」


彼が少し指先を振るうだけで、足元の魔方陣に何やら新たな古代文字が刻まれていく。

………どうする事も出来ずに、ローアンはただじっと佇んでいた。


………ローアンの視線は一瞬だけ、クライブの後方にある高い玉座に向き…すぐに戻った。







「…………ユリアクロウ…」


そう呟くと、クライブは冷たい笑みを引っ込めた。


ぼんやりとした、虚ろな瞳だ。


「………………その名は……嫌気がさすな……」