ヒタ……ヒタ……。たしかに足音が聞こえる。

だけどコータじゃない。足音は一人ではなく、複数だ。さらに耳をすますと、女の子の笑い声もかすかに混じって聞こえた。


一瞬にして、背筋に鳥肌がたった。

せっかく忘れかけていた、七不思議の噂が脳裏によみがえる。膝がガクガクと震え、わたしはその場に座り込んだ。


「……コータ……っ」


気がつくと、その名前を何度も呼んでいた。心臓が壊れそうなくらい速くなり、息が浅くなるのが分かった。


――そういえば。
これと同じくらいの恐怖を、小さい頃にも味わったことがある。

なぜか急に、わたしはそんなことを思い出した。


そうだ……あれはたしか幼稚園の頃。コータと一緒に、彼のお父さんの車の中で。


あのときのわたしは、どうしていた?

どうやって恐怖に立ち向かっていた?


緊張で乾いていく唇をこじ開けて、わたしは精一杯の大声をはりあげた。