夕暮れでした。

 キミはもういなかった。

 みだれた胸元を整えながら、あの人は交わったのだと言いました。

 もちろんわたし知っています。見ていましたから。

 あの人のからだが揺れるのを、キミの背中が弓なりになるのを、見ていましたから。


 お、し、ま、い。

 あの人のつややかな唇がつぶやきます。

 終わったわ。

 それが目の前の情事のことではないことくらいはわかりました。

 二人の愛が、終わったと。

 それは本来ならわたしにとって喜ぶべきこと。

 けれどどうしてだか、わたしの、あの人とお揃いのグロスを塗った唇は、微笑ひとつ浮かべてくれないのです。