福田陽菜は、おれが幼稚園の頃から好きな女の子だ。

 いたいけでかわいらしい(?)幼稚園児だったおれは、ガキのお約束ーーー好きな子にはいじわるをするということを徹底的に実行した。

 おかげで陽菜には思いっきり嫌われ、小学校は校区が違ったが、一緒に通うはずだった中学校に通うことも出来なかった。

 おれを避けた陽菜が、私立を受験したからだ。

 もう二度とおれたちの道は交差することはなく、初恋は思い出として記憶の向こうに消えてしまうかと思われた。



 が・・・天はおれに味方した。



 去年の夏、陽菜の通う女子学校が、高等部からは男子も受け入れると決めたからだ。

 ほぼ決まっていた陸上の名門校の推薦もけり、おれは血のにじむような努力の果て、陽菜の通うこの高校に入学することが出来たんだ。



 何年かぶりに間近でみた陽菜に、おれは目を奪われずにはいられなかった。

 長くて柔らかそうな髪、目は大きくてくっきりと二重で少し潤んでいる。

 肌はそばかすひとつなく白い。

 唇は、口紅をぬっているわけでもなく、つやつやしていて、桜色だ。

 この学校の少し古風なワンピースの制服がよく似合っている。

 でるところはでて、引っ込むべきところはしっかりと引っ込んでいる。スタイルも抜群だ。

 陽菜といえば可愛いというイメージだったのに、今は綺麗の方が合うのかもしれない。