絶対、逃がさない!②(短編)

「それでね、つくってあげることにしたの。いつも、私の荷物自転車に乗せてくれたりもするから、そのお礼もかねて。

 ---ね、光くん? どう、おいしい? 味付けへんじゃない?」



 恐る恐るというように、陽菜さんがきいた。

 すると、海老原はまじめな顔をして、一口でから揚げを食べてからいった。



「本気でうまい」



 いいながら、目を細めて笑う。
 おれが女なら、一撃でおちるような、笑顔だ。

 だが、陽菜さんも負けてはいなかった。



「ほんとう。よかったぁ」



 両手を組み合わせて、安心したかのように、極上の笑顔を浮かべた。

 かわいい、やっぱり、福田さん、笑顔が最高。

 これは、海老原じゃなくても、その気がなくても、ほれるなぁ。




 女の子二人は、つぎは体育だそうで、いそいで食べて、いってしまった。

 海老原と残されて、花がなくなり、寂しい。

 海老原はいつもの早食いはどこへいったとばかりに、ゆっくりと丁寧にお弁当を食べている。