絶対、逃がさない!②(短編)

 
 海老原、どうしちゃった? もしかして、弁当に一目ぼれ? そりゃうまそうだけど、腹に収まればなくなったしまうものにほれても、不毛だぞ?

 弁当の愛にこたえるには、食べてあげるしかないのだ!

 よし、おれがそれを教えてあげよう。



「いただきま~す!」


 
 言いながら、手を伸ばすと、次の瞬間、海老原がばっちんっと音がするほどおれの手をたたいた。

 ぎろっーーー視線で殺されるかと思うほどすさまじい眼光で、海老原がおれをにらんだ。



「おまえ! 人のものに手を出すな! カレー冷えるぞ! とっとと、食え!」

「ひぃ! は、はいっ!」



 おれはすなおにスプーンを手に取った。

 でも、カレーを口にしながら、聞く。



「食べないの、海老原? 弁当は食べてもらってこそ、弁当だぜ」