そのまま通りすぎようとすると、慌てたように呼び止められる。

「なに?」
「えっと…」

もごもごと口を動かすだけで、しょべりだすようには見えない。

「用ないなら行くわ」
「ぁ…」

なにもせずに待っててもしょうがないと思い、麻希を置いて歩き出す。

早くしないとバスが来てしまう。


門を出ると、ちょうどバスが来ていた。
少し早歩きでバスに乗る。

土砂降りの雨なのに、バスの中はあまり人がいない。

いつもと違う時間だからだろうか。

きっと、いつもの時間のバスなら人は多いんだろう。

ぼーっと、待っているとアナウンスが流れる。

『桜ノ学園前、桜ノ学園前』

バスが止まると、乗り口のほうを見る。

もしかしたら、いるんじゃないかと期待してしまう。

いつもの時間でも、ついつい見てしまう。
いないってわかっているのに、勝手に探してしまう。