男の子、昨日恋したばっかりの彼が、目の前に立っていたから。

「…」

彼は何も言わずに、あたしを見ていた。
あたしは我に返って、思い切って彼に話しかけた。

「ぁ、あの」
「これ」
「へ?」

彼が手をあたしに出した。
その手には…

探していた、クマのマスコット――。

「あ…」
「あんた昨日バスん中で落としたんだよ」

そう言って、あたしの手のひらに置く。

「…」
「違った?」
「いえ、あたしのです!ありがとうございます!!」

そう言いながら、頭を下げると、フッと彼は笑った。

「どーいたしまして」

そう言って彼はあたしに背を向ける。
あたしは、

「あの!」

どうしても何かしたくて、声をかけた。