名前の無い物語


「吉野…?」吉野は決意したように語り部を見据えた


「俺、その条件を呑むよ。」

「ちょ、吉野!」

柚歌は咄嗟に吉野の肩を掴む

「分かってるの?そんな事したら、全部忘れちゃうのよ!?」

「分かってる。けど、こうするしか方法は無いんだろ?」

「けど…。」柚歌は俯いた
自分だって分かってる
ちゃんと…分かっている筈なのに


「それに、海は華さんが待ってるし、柚歌と空も、彰さんが待ってる。

待ってる人がいるのに、帰らないなんて可哀想だよ。」

吉野が言っている事は正しい
それくらい…三人には分かっていた


「けど…もう二度と、皆には会えないってことでしょ…?」

柚歌の言葉に
吉野も悲しそうに俯いた


只でさえ、住む世界が違うメンバー
忘れてしまえば…それこそ、彼等に繋がる接点が無くなる

もう二度と…会えなくなる


例え世界を救えたとしても
こんな終わり方…只の悲劇だ


「…例え忘れたとしても、記憶は消える訳では無いよ。」