名前の無い物語


「いい加減諦めろよ。俺がお前に負ける筈ないからな!」

グッと圧され、吉野の姿勢は少し後ろ向きになる

ギリギリ、と剣が音を鳴らした


「…諦めるもんか。お前を倒して、俺も死ぬ。

それが、この世界のハッピーエンドなんだよ!」

カァンと思いっきり吉野は剣を弾いた

後ろに飛んで間合いを広げた黒蘭を、「ハァ…ハァ。」と息を整えながら吉野は睨む


「皆が必死に、命を張って護り続けてる平和を…俺たちの身勝手で壊してたまるかよ!」

旅をして分かったんだ

皆…必死に幸せに生きている


誰かを護りたくて


今居るこの居場所を…失いたくなくて


そうやって築き上げてきたものを、壊される訳にはいかない


ポゥ、と吉野の周りを白い光が纏う


…何だ?


予期せぬ光景に、黒蘭は剣を構えた



「…この物語を、悲劇にはさせない。」


纏っている光は、徐々に吉野の左手に集中する


皆が笑っていられる場所を


皆の…笑顔が見られる場所を


「俺の力で…オーバードライヴなんてもの消してやる!!」


パァンと光が弾けたその先に

黒蘭は目を丸くした


光があったその場所に…吉野の左手には
新しい剣が握られていた