名前の無い物語










ヒュッと剣が宙を切る

そこにあった黒蘭の姿は無く、吉野はすぐに神経を集中させる


…上!


感じた殺気に、吉野は素早く態勢を立て直し
上に剣を構えた


ギィン、と振り降ろされた剣と吉野の剣がぶつかり合う

間一髪、吉野は攻撃を防げたらしい



「っ…!」上からの攻撃のせいか、剣圧が重い

吉野は体をずらして、右に避けた

ドォンと強烈な衝突音に、吉野は一度間合いをとる


着地した黒蘭は、地面に食い込んだ自身の剣をゆっくり抜き
吉野に不気味な笑みを向けた


「前よりは強くなったみてぇだな…。記憶を取り戻して、本来の実力が戻ったってとこか?」

「お前に教える義理はないな。」

ギュッと吉野は剣を握り直す

確かに、記憶を取り戻してから吉野は圧倒的に強くなった

これが吉野の本来の実力



ソードマスター候補生の…滝川吉野そのもの


「ま、確かに俺には関係ねぇな。どうせ俺に負けんだからな。」


「言ったろ?俺は負けないって。」


そう吉野が言った瞬間
黒蘭との間合いは0になる

吉野は咄嗟に反応して、剣を受け止める
そのまま黒蘭を上に弾いた

空中で態勢を立て直す黒蘭

その彼に向かって、吉野は剣を向けそこから一筋の光を放った


その追い討ちは黒蘭の剣で簡単に弾かれ
、キンと音を立ててまた剣同士が衝突した