名前の無い物語






修練場から少し離れた、丘の上
町全体が見渡せる、その場所に

三つの墓石が並んでいた

ここは、吉野達が夢を誓った大切な場所
吉野は三人の遺体をここに運んで
埋葬した

墓石の上には
今では灰色になっているが
約束の…桃色の花束を添えた

吉野達は墓石の前で手を合わせ黙祷する

すれ違ってしまった心
ちゃんと耳を傾けてればって、そんな後悔ばかりが押し寄せてくる

だけど、過去をやり直せないから

だから、俺は前に進むよ

「…『マスター就任、おめでとう』。」


ーーマスター就任おめでとう!ーー

花束を渡して、そう言う筈だった


「…やっと言えたよ。」


そう呟いた吉野を
海はチラリと見た


…コイツ、強くなったよな


きっと心の中では、悲しんでいるのだろう
だけどコイツは、前に進もうとしてる


いつまでも過去の罪を引きずっていた俺とは…全然違うな

海は苦笑いを浮かべた


「…ごめん、お待たせ。」