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吉野が走って行ったのを見て
陽斗は伊織のほうに向き直る
「伊織…話がある。」
さっきまでとは売って変わった真剣な表情
伊織は何の話なのか、大体予想出来た
「俺…明日、マスター就任を辞退しようと思う。」
予想してた通りだった
伊織は悲しそうに「…そう。」と呟いた
「…感じるんだ。闇が、少しずつ俺の中で大きくなってきてるのが。」
陽斗は自分の胸を押さえた
ほんの一年位前から
陽斗の心に…わずかな闇が生まれた
本来、ソードマスターは光を司る者
一片の闇さえ写してはならない
「この一年、闇を消すために色々したけど…やっぱり無理だった。」
「…そう。」
分かっていた、と伊織は目を伏せる
本当は前から…そんな気がしてたんだ
「こんな状態の奴が、マスターを名乗る資格なんてねぇだろ?
師範が一番嫌ってる闇を持つ者なんてさ…。」
ハハッと陽斗の乾いた笑い声が響く
「陽斗…。」かける言葉が見つからない自分に、伊織は腹を立てた
ずっと、マスターを夢見て
幼いころから一緒に訓練してきた仲
一番苦しいのは、陽斗なのに…
「伊織、このことは…。」
「分かってる。吉野には言うな、でしょ?」

