名前の無い物語









「にしても、本当に驚いたよな。」

テーブルに置かれているコーヒーを飲みながら
空は深い息を吐いた

その様子に、柚歌はクスッと笑う

「な、笑うなよ!」

「だって…空ってば焦りすぎ。」

いやだって普通驚くだろ

シャトルがいきなり止まって、海が倒れて
漫画の世界だけだと思っていたガーディアンが目の前に現れて

更に…さっき別れた『木梨華』似の少女が現れたとなれば
誰だって驚くに決まってる

「それにしてもソックリよね、彼女。」

「あぁ。柚歌と語り部以上にソックリだよな。てかもうそのまんま。」

話し方とか変えただけみたいな
例えるなら…双子の片割れって感じ


コーヒーを一口飲んで
柚歌はカチャリとカップを置く

「…何か、不思議。」

「え?」空は首を傾げた


「目が覚めたら知らない場所で、海や吉野と出会って、色んな世界を回って…空にもまたもう一度会えた。」

旅立つ前の私にとっては
考えられないような毎日

「旅だって…まだ2週間くらいしか経ってないのに。もうずっと前のように感じる。」

あの頃の私は、只がむしゃらに生きていた
空を消した罪悪感から逃れたくて
必死に、現実から目を反らして


「不思議なの…。まるで、これが私の日常みたいで。」

空と吉野と海と
ずっとずっと…一緒にいられるような気がして

「だけどもうすぐ、お別れ…なのかな?」