伊織に連れられながら
吉野は後ろを振り返る
未だに魔法を食い止めている陽斗
陽斗は気配で、二人が遠ざかっている事を感じていた
…そうだ、それでいい
吉野の心を、こんなゲス野郎に渡すくらいなら
命を懸ける事など容易い
陽斗は剣に力を込めて
パァンと鎖邊の魔法を強引に弾いた
それだけで、かなりの体力を消耗した筈なのに
陽斗はチャリ、と切っ先を鎖邊に向ける
フッ、と鎖邊は余裕の笑みを浮かべた
「…愚かじゃのう。敵わぬとわかっておろうに。」
「確かに、俺はお前には敵わない。」
実際、マスターも殺られたんだ
俺が勝てる筈も無い
「だが…時間稼ぎくらいは出来るだろ?」
瞬間、陽斗の周りを黒い光が包み込む
「ホゥ…。」と鎖邊は髭を撫でた
「お主、マスターのくせに闇の力を操るのか?夏村はさぞ悲しむじゃろうな。」
「…師範には隠していた。闇が、俺の中に広がっている事は…。」

