名前の無い物語


パァンと、伊織が差し伸べた手を
吉野は強引に弾いた


「俺は行かない。陽斗を一人で置いてなんか行くか!」

「吉野…!」


何の濁りもない、純粋な瞳
その瞳を向けられて、伊織は言葉をつまらせた


「俺は何も分かってないけど…。でも、ここで陽斗を一人にしちゃダメだって事くらい嫌でもわかる!」

吉野の言葉に伊織はギュッと拳を握った

明らかに吉野の方が正しい
それは分かってる


だけど…


「…それじゃ、ダメなのよ。」

「!?…伊織?」


ポソリと呟いた伊織に、吉野は伊織も苦しんでいると悟った
一歩伊織に近づいた、その時


「吉野、伊織っ!」