名前の無い物語


2つの相反する感情を、バランスよく備えた、強い心の持ち主
それが、吉野なら…!

ーーその通りだーー

否定して欲しかったところを
師範は…頷いた


ーー奴は吉野の心を狙っている。もし、研修で吉野が世界を旅し、その心がより強大になったその時…ーー


伊織と陽斗は思い出した

以前、博士が訓練を見学しに来た事があった
離れた所で、ジッと生徒達の様子を伺う博士

そう、その視線の先にはいつも

吉野の姿があったんだ


ーー鎖邊は、吉野の心で何かをするつもりだーー


突然突きつけられた事実に、二人は必死に頭を動かした
それしか、彼らにできることはなかった


ーー…鎖邊の目的が分かった時、私が全力で奴を止める。
それまでは、吉野を外に出すことは出来んーー


分かってくれ、と師範は少し悲しそうに
悔しそうにそう言った

伊織と陽斗は
只師範の背中を見つめることしか出来なかったーーー