名前の無い物語







「ついに明日かぁ…。」

ゆっくり足を進めながら
吉野は空を見上げていた

吉野の視界には、あの頃と同じ
満点の星空


…明日で、二人の夢が叶うんだ

遠い星に向かって願った、俺達の夢
伊織と陽斗は…その夢を掴もうとしている

やっと叶って、俺はどこか嬉しくて
だけどどこか…寂しさが込み上げてきた


「…何か、悲しいな。」

自分の無意識の呟きに
吉野は自身の頬を叩いた

…何考えてんだよ!
俺は俺のペースで歩けばいいんだ

いつか、三人でマスターになって皆を護れるくらい強くなれば…

「あ。」ピタリと吉野の足は止まった

…俺、まだ二人に「おめでとう」って言ってない

別に明日会えるんだから明日でいいんだけど
でも、明日はどうせ式の後とか説明あるだろうし
何より俺が…誰より先に「おめでとう」って言いたい

「っ…まだいるかな?」

まだあの丘たいることを願って
吉野は駆け出した